泡立つ夜半

芹沢きりこ

ザラメの砂漠3(3)

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月の夜に

2020 / 210×150mm

 

好きな女の子とのデートの日、お土産に連れて帰ったフェーヴがモデルです。

小さなものたちがひしめき合う3階建てのアンティークショップの中でも、特に小さな彼らが集められたその一角にずいぶん長い時間いた気がします。

絵の具もペンも色鉛筆も点を重ねるのが好きで、感情の解像度というか、細かく描き込んでいる間ひと粒ひと粒触って確かめながら潜っていくという感覚があります。

 

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青い実の耳飾り

2020 / 210×150mm

 

贈り物の大切なカップを割ってしまって、残したくて絵にしました。

セーターの模様に閉じ込めて、珈琲とチョコレートの色がよく似合う。

時々お菓子の缶に仕舞った欠片を取り出して眺めます。

切なくて、やっぱり、きれい。

 

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森を結ぶ

2020 / 300×300mm

 

親友の結婚のお祝いに。

誰よりもたくさんの物語とロマンチックを共有してきた女の子。

彼女の作る金色のカスミソウの装身具をモチーフに、リクエストの深いブルーと静かに星が瞬く夜の森。

新しい名前からもイメージを重ねていきました。

 

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Opal

2020 / 405×270mm

 

小川洋子の小説、「琥珀のまたたき」のワンシーンから。

閉じられた世界での夢のようなひと時があまりにも美しくて苦しくなります。

人気の無い住宅街を散歩中、立派なミモザの樹を見つけてしばらくぼうっと眺めていました。

花屋に並んだ顔とは違う生きた黄色がふわふわ揺れて、そこだけ光の色が違うみたいで、幻にぶつかったような気がしました。

 

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mimosa

2020 / 210×150mm

 

瓶に挿したミモザの枝を机に置いて、絵の具を並べていきました。

黄色はあまり馴染みのない色で、天使の顔もいつもと少し雰囲気が違うけど、この絵はとても自分らしいと思います。

普段自分で花を買うことは少ないのですが、この後始まった長い巣篭もりの時間、自分以外の生き物の気配が部屋にあることと彼らの日毎の変化に救われました。