泡立つ夜半

芹沢きりこ

光の溜まり

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偽物のステンドグラスが落とす影、足もとで揺れる光の溜まり。

取り留めのない光景のなかのささやかな幻想に見惚れて、下を向きえんえんとひとりで遊ぶ女の子。

 

彼女がとても親しく思えて抱きしめたくなる。

 

たとえば絵の具に触っている時間。

無意味で静かで穏やかで、きっと外から見たらひどくさみしい姿に映る。

そうして生まれた絵たちもまた、光の溜まりみたいな存在だろう。

 

取り留めのない、取るに足らないささやかな幻想。

 

子供騙しだと思うなら、それは正しい感覚で。

他でもなく、いつだって騙したい/騙されたい子供はわたし自身だったのだから。

 

生活の濁流のなかで誰かには、おおよそ殆どの人にとっては価値を持たない一瞬が、どうしようもないガラクタがいつも、日々を繋ぎ止めているのだと。

自分だけが知っている光が、自分だけが見つけられるということが、切実な意味を持つ。

 

けれどもし、光の溜まりで一緒に遊ぶことが出来たら。

隣に並んで、そのなかにわたしとは違う光を見ている瞳の色を、震える睫毛を眺めてみたい。

 

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いちばん寒くなる頃個展をします。

それまでどうかあたたかくして、小さな光を拾いあつめてお過ごしください。