泡立つ夜半

芹沢きりこ

2020-01-01から1年間の記事一覧

熱伝導率

インスタントコーヒーを溶いたスプーンを差したまま、マグカップに口をつける。 一瞬頬に柄が触れて、ちり、とした刺激が走る。熱い。 「シルバーは熱の伝わり方がとても美しいのですよ。」 吉祥寺のはずれ、半地下のアンティークショップで魔女のような店主…

光の溜まり

偽物のステンドグラスが落とす影、足もとで揺れる光の溜まり。 取り留めのない光景のなかのささやかな幻想に見惚れて、下を向きえんえんとひとりで遊ぶ女の子。 彼女がとても親しく思えて抱きしめたくなる。 たとえば絵の具に触っている時間。 無意味で静か…

21/24

21歳と24歳の分身と部屋 ダンボール、アクリルガッシュ、水彩色鉛筆 金木犀の降る朝 / 2016 君影草 / 2020

くらやみの先へ

くらやみの先へ 文 中澤萌音 絵 セリザワキリコ -------------------- くらやみをおそれる なにかに引きずりこまれそうな 飲みこまれそうな気がする にぎやかな街 日差しがふりそそいでいる 笑い声 車のクラクション 雑音でみちている そんなとき ビルとビル…