主人公を「きみ」と呼ぶ語り手は物語の外にいて、淡々とした記録のような描写から感情らしいものは見えない。 誰というわけでもなく、作者とも読者とも違うひとつの視線。 この慣れない感覚にどこかで出会ったような気がして、あ、と思う。 何度も反芻して、…
私のなかに棲む暗闇は臆病で、あたたかい手のひらに撫でられている間だけ静かに眠っていてくれる。 野良犬みたいな嗅覚で、自分を決して消そうとしない人間を嗅ぎ分ける。 「わからないけど綺麗だと思う」と言われた時、泣いたのは彼女だった。 噛みつかなく…
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