泡立つ夜半

芹沢きりこ

ザラメの砂漠3(2)

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天使の休息所

2020 /  100×148mm

 

初めて高崎とHevenly Coffeeへ行った日の絵日記です。

3月のよく晴れた日でした。

車窓の向こうの山なみや光が波打つビニールハウス、ピスタチオアイスクリーム、硝子の食器、大きな窓、チューリップ、テリーヌショコラ、シャガールの天使とサーカス、桜の蕾、提灯、孔雀と白鳥がいる公園、夕暮れの水辺など。

タイトルはこの場所へ繋いでくれた友人の言葉を借りました。

 

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涙あつめ

2019 / 220×333mm

 

転職や引っ越しといった生活の変化に飲まれて、絵を描くことも自分自身も遠くなっていた時期でした。

今思うと忙しさより、すり減らないよう色んなことを感じにくくしていたのだと思います。

描き終えた時ひさしぶりに自分の絵に会えた気がして、おかえりわたし、という気持ちになったのを覚えています。

綯い交ぜの感情、理由の説明出来ない誰も知らない涙を心のなかの小さな天使が集めている。(それがあれば、大丈夫。)

 

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シネマ

2020 / 150×210mm

 

2020年の3月。

あらゆる動きが止まった春はまるで現実味がなくて、フィクションのなかにいるようでした。

嘘みたいに時間の流れが穏やかで、長くひとりで過ごすうち肌に触れる小さな世界と自分との境目が曖昧になっていくような。

普段より心と体の距離が近くて、頭を通す前の感覚が感覚のままするすると色になりました。

お気に入りの絵です。