泡立つ夜半

芹沢きりこ

ザラメの砂漠3(4)

f:id:kilico516:20210309125540j:image

甘い魚

2019 / 380×455mm

 

絵を描く時は感情だったり記憶だったり自分の内側にあるものを起点にすることが多いのですが、これは物語をつくろうと思って描きました。

今までなんとなく嘘のような気がしてしまって避けていたけど、ただ優しくて可愛い絵にしたかった。

お伽話がシェルターになって守ってくれる部分があることを大人になるほど感じています。

顔馴染みの野良猫のことを浮かべながら、みんな楽しい夢を見ていたらいいなとか。

 

✴︎

 

f:id:kilico516:20210309125651j:image

星の家出

2020 / 220×333

 

高校生の頃は家出のことばかり考えていました。

ここじゃないどこか遠く、想像は現実味がない方がよかった。

寂れた公園の隅の遊具はひどくポップでものかなしくて、きっと乗り物にふさわしい。

誰もいない真夜中に跨って目を閉じる。

空っぽの部屋を通り過ぎ、街を抜け、夜空を駆ける。

探さないで欲しいけど、長い旅の後で星座になれたら見つけて欲しい。

 

✴︎

 

f:id:kilico516:20210309125728j:image

ラムダーク

2019 / 220×273mm

 

慣れないバーで出されたホット・バタード・ラムをひと口飲んだ時のフワーッと体温が上がる感覚が鮮やかで、ああお酒だ、と思いました。

憧れと魔法が含まれている、特別な飲み物。

本当はお酒はいつもそういう存在であって欲しい。

お菓子づくりのためのラム酒を小瓶からホットミルクに垂らすとおまじないの気持ちになります。

 

✴︎

 

f:id:kilico516:20210309130023j:image

迷子の森

2021 / 315×410mm

 

背景を塗ってから人物を描くまでにとても時間のかかった絵。

いつもどこかで迷子になりたいと思っているのかもしれない。

そしてそれは、自分の部屋にいながら帰りたいと思うのと限りなく同じ意味のこと。

ただいまと言える場所のひとつになるような絵が描けたらいいなあと、そんなことをぼんやり考えていました。