私のなかに棲む暗闇は臆病で、あたたかい手のひらに撫でられている間だけ静かに眠っていてくれる。
野良犬みたいな嗅覚で、自分を決して消そうとしない人間を嗅ぎ分ける。
「わからないけど綺麗だと思う」と言われた時、泣いたのは彼女だった。
噛みつかなくても見つけてくれた。
ここにいてもいいのだと、ほんとうはただ存在を認めて欲しいだけの子供。
獰猛で、繊細で、無邪気なくらやみ。
ひとりになって彼女が目を覚ます。
目が合って、私が優しい人間ではないことを誰よりも知っている彼女は爪を立てる。
抱き締めるたび傷だらけになるけれど、その時わたしは自分の体に流れる血の色と苦しいほどの熱を知る。
それは何だか泣きたいような、どこか安心に似た気持ち。
もうずっと、とてもとても長い時間を一緒に過ごしてきた、この厄介な古い友達と遊ぶために絵を描いているのかもしれない。
親しみを込めて。
感覚を澄まして。