泡立つ夜半

芹沢きりこ

皮膚の辞書

夕方初めて外に出て、駅から公園へと伸びる川沿いの道を歩く。

高校生の頃夢中になった、歌のない音楽を聴きながら。

エモいって言葉の意味を97%くらい解っているつもりでいたけど、最近はうまく思い出せない。

頭より肌で意味を知る種類の言葉は触らないと遠くなる。

それでも景色が少し和らいで、泣きたいような気持ちになるのは懐かしいからだけじゃないこと。