あらためて、小さな絵の作品集をつくりました。
ぽつぽつと旅立っていて嬉しいです。
表紙には素朴な風合いの生成り色の紙を、
中身には少し厚みのある触り心地のよい紙を選びました。
物として持っていたいものを作りたくて、ふたりでたくさん悩んだところ。
りくちゃんによるデザイン、細部まで手触りを大切に仕上げてくれたことが伝わります。
タイトルや扉絵の鉛筆のような質感は、実際に手書きした線を取り込んで組み立てていったそう。
アクリルガッシュと水彩色鉛筆で描いた絵のアナログな温度に寄り添ってくれました。
文字のページは、それぞれの絵のモチーフについてのエピソードを。
いつも書いた文章を延々と直したくなってしまうのですが、本の形になったらしっくりきました。
ここからは本に載せていない、りくちゃんにも伝えていなかったことなのですが(出来上がった宝物みたいな本を見てそれでよかったと思う)、
小さな絵たちが生まれた背景を書いておこうと思います。
よければお付き合いください。
収録されているいくつかのシリーズは2021年に開催した二人展に合わせて制作したものですが、その後また小さな絵を描き始めたのは約1年後。
というのも、その間にひどく落ち込むことが続いて絵が全く描けなくなって。
絵が描けない状態は心が動かない状態でもあり、しばらくどこか一部が凍ったような日々でした。
そんな時リハビリのような気持ちで、カメラロールにあった何気ない風景や、部屋のなかの身近なものを写し取っていったのでした。
今まであまり具象的なモチーフを描いてこなかったので、いつもと毛色の違う絵たちを意外に思った方もいたかも知れません。
それはとても楽しかった。
とても久し振りの感覚で、絵を描くのが楽しいってこんなに嬉しいんだとほとんど泣きたい気分でした。
そして描き始めると、描くために見つめること、物語を見出すことをだんだん思い出していきます。
気に留めてなかった景色に目が向くようになる。
道端の小さな蝶や無人の公園に佇む遊具に惹かれたり、切花の蕾が開く過程に見惚れたり。
懐かしい本に挟まれたいつかの感情と再会したり、長い時間をかけて集まったガラクタのひとつひとつが今ここにある理由を辿って、自分の真ん中が戻っていく感触がありました。
すっかり損なわれてしまった気がしていた、純粋のようなもの。
途中から本をつくるという目標も止まっていた手を動かしてくれました。
だからわたしにとっては回復の記録でもあります。
でもそういう本にはしなかった。
込めたものはあっても伝えたいことではなくて、「きれい」とか「かわいい」とか、「やさしい」ってシンプルな感想に報われる気持ちがあります。
だけど時々そこに含まれる暗さを嗅ぎ取ってくれる人もいて、それもやっぱり、見つけてくれて本当にありがとう。
それぞれ好きなように楽しんでもらえたら。
長くなってしまいましたが、愛おしい形に出来てとっても嬉しい。
たくさんの人に届けられたらいいなと思っています。
どうぞよろしくお願いします。
✴︎
作品集『tiny tales』
著者 芹沢きりこ
装丁 森島彩生
B6 / 42頁
限定100部
¥2,000(tax in)